91回看護師国家試験 午後問題1~15
次の文を読み午後問題1~3に答えよ。
78歳の女性。アルツハイマー型痴呆で要介護2。会社員の息子と2人暮らし。物忘れは著しいが、午前11時から2時間の訪問介護(身体介護と家事援助の折衷型)を月に20回利用しながら、日中は1人で過ごしている。ホームヘルパーとの関係は良好である。時々、火の不始末があり、息子が「食事の用意は自分でする」と言っても「私がしなければまともな食事をしないじゃないの」と譲らない。最近、夕刻にエプロン姿で商店街に行き、帰り道が分からなくなり、警察に保護されることがあった。親子関係は良く、息子は各種サービスを導入して、できるだけ家でみたいと言っている。訪問看護婦は月に1回訪問し様子を見守っている。
午後問題1 訪問介護2時間の費用の額は7,050円、要介護2のサービス利用限度額は194,800円である。
訪問介護サービスに対する1か月の自己負担額はどれか。
1. 5,000円
2.14,100円
3.19,480円
4.42,300円
午後問題2 3か月後、息子を「あの人」と言ったり、スカートの上にズボンをはこうとしたりするようになってきた。ある日、看護婦が訪問すると、台所から煙が出ているのを近所の人が発見し、大騒ぎになっていた。魚を焼いていてすっかり忘れてしまったらしい。本人もショックを受けたようで落ちつかない。
訪問看護婦による本人への対応で適切なのはどれか。
1.「炊事は危険だからこれからは息子さんに任せましょう」
2.「近所に迷惑をかけないようにしましょうね」
3.「同じ様なことを繰り返していますね」
4.「火事にならなくて良かったですね。もう大丈夫ですよ」
午後問題3 看護婦は今後のことを息子と話し合い、息子は要介護認定の再申請を行うことにした。
主たる理由はどれか。
a.息子の介護時間の限界
b.隣近所からの苦情
c.夕食を準備するときの火の不始末
d.息子を認知できなくなってきていること
1.a、b 2.a、d 3.b、c 4.c、d
次の文を読み午後問題4~6に答えよ。
55歳の男性。妻と高校生の息子との3人暮らし。会社の経理部長。まじめで几帳面な性格。仕事を生きがいに働き続け、同期入社の中では一番高い職位にある。慢性腎不全のため5年間血液透析を行った後、本人の希望で連続携行式腹膜灌流法(CAPD)を導入することになった。本人は一刻も早い職場復帰を望んでいる。入院中はCAPDの操作に熱心に取り組んでいた。
午後問題4 退院後、CAPDは1日4回(0時、6時、12時、18時)行うことになった。
会社の昼休みにCAPDを行うために必要な設備はどれか。
a.実施する場所
b.透析液を保管する冷蔵庫
c.透析液を温める電子レンジ
d.CAPDの物品を保管する専用棚
1.a、b 2.a、d 3.b、c 4.c、d
午後問題5 退院後2週で元の部署に戻り、その後は順調に経過し、自信を持ち始め6か月が過ぎた。しかし、仕事が忙しく、CAPDの実施が2時間程度遅れたり、急いで操作することも多くなった。3日前からカテーテル出口部が発赤し、圧痛がみられるようになったため、外来を受診した。
観察項目で重要なのはどれか。
1.体重増加
2.出口部からの液漏れ
3.努責時の腹壁の膨隆
4.排液の混濁
午後問題6 その後、仕事のためCAPD管理が不十分で、入退院を繰り返し数年が経過した。3か月前、直属の上司が休職したため、その代理を任され、さらに多忙となった。徐々に体重が増加し、高熱が持続したため、緊急に入院した。
今後の指導で最も重要なのはどれか。
1.人生における仕事の意味を考えてもらう。
2.部署の配置転換を希望するよう提案する。
3.腎移植について医師と相談するよう勧める。
4.妻にCAPDの管理方法を指導する。
次の文を読み午後問題7~9に答えよ。
Aさん、45歳の男性。1人暮らし。10年前に糖尿病を発病し、インスリンの自己注射を行ってきた。視力低下が徐々に進行して2年前に離職したが、独居のまま通院療養生活を続けていた。相談指導にあたっていた外来看護婦は、Aさんに針刺し傷や熱傷、打撲による皮下出血などを認めるようになったため、独居や単独での通院は危険であると判断し、新しいマンションに引っ越したばかりの両親と一時期同居するように勧めた。外来看護婦は母親にインスリン注射、食事療法、環境調整の方法などを指導し、訪問看護婦に連絡した。Aさんの視力は指数弁10cm/n.d.で神経障害(ニューロパシー)も著しい。
午後問題7 Aさんの視力低下を招いた病変を示す眼底所見はどれか。
午後問題8 図は両親宅の見取り図である。
Aさんが住宅内を安全に移動するために最も指導を要するのはどれか。
1.Aさんの部屋から玄関まで
2.Aさんの部屋からリビング入口まで
3.リビング入口から食卓まで
4.リビング入口からソファーまで
午後問題9 Aさんは市役所の福祉課に相談に行き、家族と話し合って中途失明者のための生活訓練課程のある施設に入所することになった。そのためにはインスリンの自己注射を習得する必要があり、訪問看護婦がペン型注射器(図)の使用方法を指導した。
神経障害(ニューロパシー)を補う方法はどれか。
1.針の空気抜き:インスリンを手掌に滴下させた後に臭いを嗅ぐ。
2.注入単位の確認:注射器のダイアル音の回数を数える。
3.注射部位の変更:注射器を持たない手の指を腹部の所定の位置で広げ、指の間を順番に注射する。
4.指への針刺し予防:広げた指の1本を注射器を持った手の小指で確認する。
次の文を読み午後問題10~12に答えよ。
57歳の男性。10年前に心筋梗塞で入院し、心臓カテーテル検査で左冠状動脈の2枝の閉塞が認められた。退院後は自己管理は良く、定期的に外来通院をしていた。5日前から息切れを感じたが胸痛はなかったため、通常とおり仕事をした。次第に下肢の浮腫が現れ、夜間に呼吸困難が出現し、緊急入院となった。身長170cm、体重は3.5kg増加して74kgとなっていた。「苦しくて、身の置き場がない」と苦痛な表情であった。体温36.0℃、血圧108/88mmHg。心電図モニターで、心拍数120/分、洞性頻脈。胸部エックス線撮影では肺うっ血が著明で、心胸比64%であった。動脈血分析でpH7.39、動脈血酸素分圧(PaO2)70mmHg、動脈血炭酸ガス分圧(PaCO2)40mmHgであった。
午後問題10 聴診所見のうち経過観察に重要なのはどれか。
a.湿性ラ音
b.拡張期心雑音
c.心膜摩擦音
d.Ⅲ音ギャロップ
1.a、b 2.a、d 3.b、c 4.c、d
午後問題11 フロセマイド、ジゴキシン及びカプトプリルの薬物療法が開始された。
治療の目標値で適切でないのはどれか。
1.心胸比:50%以下
2.心拍数:90/分以下
3.動脈血酸素分圧(PaO2):80mmHg以上
4.体重減少:8.0kg以上
午後問題12 運動耐容能の低下から生じる合併症の予防で、入院後直ちに始めることができるのはどれか。
1.弾性ストッキング着用
2.胸部タッピング
3.四肢の自動運動
4.鎮痛薬による安静
次の文を読み午後問題13~15に答えよ。
55歳の男性。会社員。妻と2人暮らし。人間ドックでC型肝炎ウイルス(HCV)抗体陽性を指摘された。自覚症状はない。受診の結果、HCV-RNA陽性、AST(GOT)20IU/L、ALT(GPT)30IU/L、総蛋白7.5g/dl、アルブミン4.5g/dl、総コレステロール210mg/dlであった。約15年前に輸血を受けたことがある。身長168cm、体重64kg。1年前から週に5日のペースで毎日約5kmのジョギングを始め、体重が約4kg減っている。若いころから酒が好きで、現在は毎日ビールを約700ml飲んでいる。
午後問題13 受診時の状態はどれか。
1.過去にC型肝炎ウイルスに感染し、現在血液中にウイルスは存在しない。
2.現在血液中にC型肝炎ウイルスは存在しないが、肝細胞の破壊がある。
3.現在血液中にC型肝炎ウイルスは存在しているが、肝細胞の破壊はない。
4.現在血液中にC型肝炎ウイルスが存在しており、肝細胞が破壊されている。
午後問題14 男性への指導内容で適切なのはどれか。
1.ジョギングを軽い体操に変更する。
2.動物性蛋白質をできるだけ摂取する。
3.自覚症状がなければ受診しなくてもよい。
4.飲酒をやめるよう勧める。
午後問題15 5年が経過し、男性の病態がC型慢性肝炎へと進行したため、インターフェロン療法が始まった。治療開始後30日、男性は不眠になり「仕事もうまくいかないし、どうせ肝癌になるのだし、もう死んでしまいたい」と看護婦に訴えた。
対応で適切なのはどれか。
1.「もう少し頑張ればウイルスを駆除できますよ」
2.「気持ちが明るくなる薬を処方してもらいましょう」
3.「インターフェロン療法を中止することになるでしょう」
4.「気分転換になるようなことを考えましょう」