91回看護師国家試験 午後問題31~45
次の文を読み午後問題31~33に答えよ。
Aさん、67歳の女性。28歳の会社員の娘と2人暮らし。娘が7歳のときに夫は病死し、その後、雑誌の編集に携わり娘を育て上げた。転移性の肺癌で3か月前から自宅で療養している。Aさんは余命が短いことを知っていたが、最期まで病気に立ち向かうという意志が強く、これまで治療方針など全てを1人で決めてきた。病状が進行し、1か月前から胸水貯留に伴う呼吸困難のために酸素吸入を始め、塩酸モルヒネの持続皮下注入で疼痛をコントロールするようになり、本人の依頼によって訪問看護が開始された。Aさんは自分の意思表示ができなくなることを恐れ、モルヒネの使用量を制限しており、十分な症状緩和が得られていない。1週前から呼吸困難が強くなり、Aさんの顔から眉間のしわが消えることがなくなってきた。
午後問題31 娘に対する訪問看護婦の働きかけで適切なのはどれか。
1.「Aさんは自分の意志で決める方なので、このまま見守りましょう」
2.「Aさんは弱ってきています。あなたがお母さんを支えましょう」
3.「Aさんが苦しむのを見ているのは辛いと思います。入院を希望しますか」
4.「あなたがよければ、モルヒネの量を増やすことを考えましょう」
午後問題32 Aさんは看護婦に次のように話した。「娘が『お母さん頑張ったからもういいよ。私は1人でやっていけるよ』って言うの。もういいんですって……。モルヒネの量を増やして楽にしてもらったら、あの子、1人で生きていかなければならないのよね。わかっているのかしら」
このときのAさんの気持ちで最も考えられるのはどれか。
1.娘を1人残していくことへの複雑な心境
2.モルヒネの増量に対する不安
3.母親としての尊厳を最期まで守ること
4.自分が死ぬことについての覚悟
午後問題33 モルヒネが増量され、Aさんは眠っていることが多くなった。口を大きく開け、あえぐような呼吸や喘鳴が出現し、看護婦はAさんの死が近いと判断した。
娘への支援で適切なのはどれか。
a.急変時の救急車による搬送について話し合う。
b.死亡直前に起こる症状について説明する。
c.処置を行うときは娘と一緒に行う。
d.臨終時に医師か看護婦が立ち会う必要性について説明する。
1.a、b 2.a、d 3.b、c 4.c、d
次の文を読み午後問題34~36に答えよ。
39週2日、体重2,800gで出生した乳児。出生時のアプガースコアは9点であった。日齢1で、中位鎖肛の診断を受け、S字状結腸に2連銃型人工肛門が造設された。術後1週で母乳の経口摂取が可能になり、人工肛門にはパウチが装着された。診断や今後の経過について説明があった際、両親は動揺したが、児の出生については非常に喜んでいた。母親は積極的に児に関わり、退院に向けた指導をよく理解し、人工肛門を管理する手技は十分獲得できていた。人工肛門周囲に軽度の発赤は生じたが、炎症は悪化することなく、1か月後に退院することになった。
午後問題34 手術直後の便の性状はどれか。
1.粘性黒緑色便
2.黄色顆粒便
3.白色水様便
4.タール便
午後問題35 退院指導で適切なのはどれか。
1.つなぎ型のベビー服を用いる。
2.パウチは折りたたんでおむつに入れる。
3.入浴時は腹部をラップでカバーする。
4.うつぶせにしないよう注意する。
午後問題36 児は5か月になり、離乳食が開始された。外来に児を連れて来た母親は「離乳食はまだそれほど多く食べないのですが、最近、便が緩めなんです。母乳はこのまま続けていこうと思っているのですが、離乳食を進めていくときに、下痢気味になったらどんな食事にしたらいいのでしょう」と質問してきた。児は7,200gになっている。
指導内容で正しいのはどれか。
1.「これからは母乳ではなく、粉ミルクに変えましょう」
2.「魚はイワシやサンマのすり身がいいでしょう」
3.「大根やニンジンを軟らかく煮てあげましょう」
4.「マカロニのクリーム煮などをあげましょう」
次の文を読み午後問題37~39に答えよ。
2歳の男児。発熱5日で紹介されて入院した。近くの小児科医院で3日前から抗菌薬を処方され服用している。昨日から眼球結膜の充血、口唇の発赤と亀裂があり、入院時には体幹の発疹と手足の浮腫が認められた。医師から両親へ川崎病(MCLS)との診断名が告げられた。
午後問題37 入院直後の看護で適切なのはどれか。
1.発熱にはその都度、解熱薬を使用する。
2.心臓への負担を考え体動を制限する。
3.小枕を用いて四肢の位置を高くする。
4.食事は食べられるものを食べさせる。
午後問題38 血液検査の結果、白血球12,600/mm3、血小板32万/mm3、CRP6.8mg/dlであり、γ‐グロブリン製剤の点滴静脈内注射が開始された。開始5分後にナースコールで母親が「子どもの顔色が悪くて震えている」と訴えてきたので、看護婦が訪室した。
対応で適切なのはどれか。
1.「熱の上がり際の悪寒でしょうから様子をみてください」と伝える。
2.直ちに点滴静脈内注射を中止する。
3.母親に熱性けいれんの既往を確認する。
4.「担当医師を探しますので少しお待ちください」と伝える。
午後問題39 入院翌日に心エコー検査を受けることになった。機嫌が悪く、母親に抱かれていないと激しく泣く。
母親への説明で適切なのはどれか。
1.「泣かせたままでも大まかに検査できればよいですよ」
2.「鎮静薬で眠ってから検査をすることになるでしょう」
3.「1週後の機嫌がよくなるころにしてもらいましょう」
4.「今朝の心電図モニター上異常がないので中止になるでしょう」
次の文を読み午後問題40~42に答えよ。
9歳の女児。学校の健康診断で尿糖を指摘され、今回の入院で1型糖尿病と診断された。食事は1,800kcal、インスリンは速効型を朝食前、昼食前および夕食前に、中間型を就寝前に皮下注射し、血糖測定は1日7回行っている。児は、血糖の自己測定やインスリンの自己注射が必要だと説明を受け理解しているが、自分ですることを嫌がり涙ぐむため、看護婦や母親が行っている。
午後問題40 入院7日、インスリン自己注射の指導時、児はペン型注射器を握り何度も大腿部に刺入しようとするが「やっぱり恐い」と言ってできない。
自己注射を促す方法で適切でないのはどれか。
1.みかんを大腿に見立てて刺入する練習に誘う。
2.自己注射の必要性を再度説明する。
3.自己注射を他児と一緒にするのを勧める。
4.大人が自己注射をしているところを見せる。
午後問題41 インスリン自己注射が可能になり、血糖値も安定してきた。退院も近い日の23時30分ころ、児は「目が覚めちゃった。おなかが空いたよ」とナースステーションにやってきた。血糖を測定したところ、72mg/dlであった。看護婦は児に対し、このような場合どのようにするのかを聞いた。
児の理解が適切と判断できるのはどれか。
1.「血糖値がよさそうだから食べずに寝るね」
2.「お砂糖を1袋(10g)飲んでから寝るね」
3.「ビスケットを3枚食べてから寝るね」
4.「カップ麺を食べてから寝るね」
午後問題42 血糖値が良好にコントロールされたので、児、家族および学校の関係者とともに、これからの学校での生活について話し合った。給食は1食平均600kcalである。
適切なのはどれか。
1.昼食前に行う体育には参加しない。
2.持参する砂糖は担任に預ける。
3.インスリン注射はトイレで行う。
4.給食は全量摂取する。
次の文を読み午後問題43~45に答えよ。
Aさん、30歳の1回経産婦。妊娠40週1日、午後8時ころ「トイレに行ったら、腟から水のようなものが出た気がする」と産科病棟に電話があった。「お腹の張りは、1時間4、5回あるのですが、痛みはありません。今は何かが流れているような感じはありません」と話している。妊娠経過中、異常は認められていない。
午後問題43 受診を勧めるとAさんは「子どもとお風呂に入ってから病院へ行きたい」と答えた。
対応で適切なのはどれか。
1.「お子さんと入浴してから来て下さい」
2.「一人で入浴してから来て下さい」
3.「シャワーを浴びてから来て下さい」
4.「入浴もシャワーもしないで来て下さい」
午後問題44 Aさんが来院したときに、優先して収集する情報はどれか。
1.腟分泌物の性状
2.胎児心拍数
3.陣痛の状況
4.胎位・胎向
午後問題45 陣痛開始から6時間経過したころ、Aさんが眠気を訴え始めた。子宮口は6cm開大し、児頭はStation±0、陣痛は5~6分周期で約30秒の発作。努責感はない。胎児心拍数は140bpmであり、徐脈はない。
眠気への対応で適切なのはどれか。
1.歩行するように勧める。
2.間欠時に話しかける。
3.間欠時に眠ることを勧める。
4.眠れるように訪室を避ける。